SUMMIT REPORT
2021年4月21日(水)に開催されたティアフォー初の公式オンラインサミット「Tier IV SUMMIT 2021」。当日は計10のセッションが行われ、この日の最後のセッションとなった「Autoware × MIH EV Open Platform」は、EMS / ODM(設計製造受託)業界の巨人・台湾最大手「鴻海精密工業」(Foxconn)が主導して設立したEVオープンプラットフォーム団体「MIH」経営トップと、The Autonoware Foundation(AWF)の代表理事を務める加藤真平が「EVと自動運転の将来」について語り合い、大きな注目を集めた。
この記事ではこのセッションの中身を要約してお届けする。
(※この記事はモビリティ業界テック系ニュースメディア「自動運転ラボ」編集部提供です)
冒頭、Foxconnの劉会長は「EV業界のイノベーションを加速・発展させるためにMIHを立ち上げた。MIHとAutowareの自動運転についてのゴールは共通であり、自動車業界に明るい変化をもたらすべく取り組んでいる」とあいさつし、「オープンプラットフォームは未来。一緒に世界を変えよう」と呼びかけた。
また、「MIHは独立した組織で、Jack Cheng(CEO)とWilliam Wei(CTO)が率いている。昨年10月にオープンプラットフォームを立ち上げ、自動運転技術に強い関心を持つ二人がこのトピックを話すのに適している」と2人を紹介し、スピーカーをバトンタッチした。
MIHの展開について、Jack CEOは「(2020年)10月からアライアンスの拡大に努めており、MIHはすでに約900の企業とパートナーシップを結んでいる (2021年3月時点)。2021年7月には独立した組織となり、FoxconnやFoxtronからスピンオフしコンソーシアムとして独立したビジネスを行っていく」と説明し、これまでの自動車業界の典型である閉鎖的なプロセスとは全く異なるオープンプラットフォーム戦略を推進していくとした。
William CTO は、EVキットについて「将来のEVプラットフォームを開発するすべてのメンバーにオープンになっているソフトウェア開発用キットで、今はEVキットドライブ・バイ・ワイヤインタフェースや、ツールキットと呼ばれる最初のEVキットフレームワークを公開している」と概要を説明した。
続けて「Foxtronが提供するこのプラットフォームは、イノベーションに関する興味深いアイデアや車の製造までの道筋を示す。将来のEV開発は、SDKでiPhoneアプリを作るのと同じくらい簡単になるだろう」と述べた上で、「EVキットを持つことは自動運転開発者になることであり、将来のEV製品に必要なものを提供できるようになる。また、自動運転コミュニティのドライブ・バイ・ワイヤフレームワークを持つことで、革新的なアイデアを実行することが可能となる」とEV開発におけるイノベーションを示唆した。
加藤氏からの「AutowareはEVキットに搭載される最初の自動運転スタックの1つになり得るか?」との問いかけには、「もちろん。EVキットとAutowareは自然に融合できるものと思う」とした。
「MIHやAWFが一緒に取り組むことで、次のステップは何になるのか?また、スタートアップやOEMからEV製造を依頼されたとき、MIHやAWFはどのように応えていくべきか?」(加藤氏)という問いに対し、William CTOは次のように回答した。
「我々は2つのセグメントで一緒に取り組めると考えている。Autowareを使用する自動運転開発者向けに対しては、OEMや自動車メーカーがリファレンスデザインに基づいて、市場に出すためベストなものを取捨選択することができる。したがって、開発者側からの目線としては製品すべてのフルスタック開発を、商品を顧客に届ける側としてはMIHから来たOEMや自動車開発者を有していることになる。これは非常にマッチしていると感じている」
さらにスタートアップに関しては、「(EVスタートアップの)Fiskerのような新しい開発者は、基本的にブランディング、マーケティング、ビジネスモデルを構築したうえでFoxconnにきて、車両製造についてMIHのリファレンスデザインから選択することになる。この形が主流となるだろう」とした。
加藤氏は「Autowareの視点から言うと、EVキットと一緒に取り組むことは御社もしくは我々のお客様にリファレンスデザインやエコシステムの一部としてAutowareを別の角度から見ていただけることになる。したがって、AutowareがEVキットの自動運転スタックをリードするようになれば、エコシステムパートナーは必要であればAutowareを選択し、あるいはAutowareなしでも開発を進められる」と話し、オープンエコシステムの開発を歓迎した。
ティアフォーとMIH(Foxconn)がそれぞれ本社を構える日本と台湾の共通点について、Jack CEOは「どちらも島国で、異なるアイデアや意見を積極的に取り入れるオープンプラットフォームを促進することは、中国やアメリカと比べ非常に重要となる」とした。
加藤氏も「島国の我々は巨大で完璧なシステムを単独で作ることはできない。だからこそオープンエコシステムを作り上げるのであり、MIHとAWFのオープンテクノロジーというコアコンセプトやスピリットが出来上がったと思う。台湾と日本でこの構想をリードしたい。一緒に世界を変えられる」と同調した。
後段、加藤氏は唐突に「ところで、Foxconnがアップルカーを作る可能性についてコメントを」と興味深い質問を投げかけた。
アップルに勤めていた経歴を持つWilliam CTOは「MIHが作り上げているプラットフォームは開発サイクルを短縮化し、開発リスクを減少させたい企業は誰でも使える。車両を作りたいと思っている世界中の誰もがこの価値を享受できるようにする」とオープンな姿勢を示し、「iPhoneやAndroidアプリを誰でも作れるのと同じようなこと。それをEV業界で起こしたい」と話した。
結びで加藤氏は「近い将来、MIHとAWFのアライアンスや、EVキットやAutowareを構成したプラットフォームは、EVマーケットのオープンイノベーションにおける最初のリーディングケースになると考えている。ぜひ議論を続け、このコラボレーションを実現させたい」と意気込みを述べた。
MIHとAWFがエコシステムを共同開発することに触れられた同セッション。最後にはアップルカーに関する質問がWilliam CTOに投げかけられ、見応え十分のセッションとなった。
ティアフォーとMIH、ティアフォーとFoxconn、そして各社が未来のモビリティ市場でどのような活躍を見せていくのか、引き続き注目したい。
このセッション動画をアーカイブ配信しています。
Youtube「Tier IV SUMMIT 公式チャンネル」にてご覧ください。
開催当日にログインすることでセッション配信を閲覧することができます。